
今回はWebマーケィングの世界において「なぜ分析した結果対策をしたのに効果が出ないのか?」の原因について解説していきます。
Webマーケティングの世界においては、その大半の活動を数字で可視化することができます。リスティング、ディスプレイ広告、Googleアナリティクス、など、数えればきりがありません。
しかし、大量のデータが溢れすぎているため上手に分析し、判断をすることが困難だと感じつつも、現場で安易に「分析」という行為が行われてしまっているのも事実です。そこで、よくある間違いを例に出しながら正しい「分析」について解説していきます。
データを集計するときに平均値を多用する
先に、Webマーケティングの分析現場でよくありがちなことを以下にまとめます。
- データを集計するときに平均値を多用する
- 平均値以外のまとめ方を良く知らない
- グラフやチャートを多用すると分析した気になる
- 2つの広告のクリック率『0.5%』『0.7%』があったとした時、0.7%の方を根拠なく『良い』と判断してしまう
- なんとなく時系列でみると上昇傾向、など目検と私見で判断しがち
- 分析した結果を基に対策したはずなのに、あまり効果が出ない
- 会社で用意されたテンプレートのレポート以外は、自分でレポートをカスタマイズして作れない
では、事例に入っていきます。
ある商品に関する広告を配信した結果、以下のようになりました。
広告 | 露出回数 | バナークリック率 | クリック数 |
---|---|---|---|
バナー画像 | 1,123,398 | 0.20% | 2,247 |
バナー画像2 | 11,201 | 0.60% | 67 |
バナー画像3 | 44,913 | 0.45% | 202 |
合計 | 1,179,512 | 0.21% | 2,516 |
この3つのバナーは平均すると0.21%クリックされたことになったわけですが、この平均って何の意味があるのでしょうか?
バナー画像2と3は、平均値よりもクリック率が高いから良いバナーである!と判断してよいのでしょうか?
こういった集計はWebのマーケティングの分析の現場においては良くある事例ですが、この集計結果から、何がわかって、何を次のアクションとするべきなのでしょうか?
平均値以外のまとめ方を良く知らない
先ほどの平均の話を別の角度で見ましょう。
Webマーケティングとは少し外れますが、あるテストに関する2つのクラスの結果です。
A組 | B組 | ||
---|---|---|---|
受験者 | 得点 | 受験者 | 得点 |
Bさん | 90 | Bさん | 60 |
Cさん | 30 | Cさん | 52 |
Dさん | 20 | Dさん | 55 |
Eさん | 10 | Eさん | 40 |
平均点 | 50 | 平均点 | 50 |
これらの結果を見て、A組とB組の平均点が同じだから、両方の組の学力には差がないという人はいないでしょう?
しかし、ここからが問題です。
平均点が同じでも、A組とB組には何か差があるとわかっているのに、どれほどの差なのか?それが何の差なのかを説明することができない人が多いのです。
平均以外でまとめる方法がわからないと、これ以上事象を説明することができません。
事象が説明できないと、当然次のアクションを正しくとることができません。Webマーケティングの分析からは少し外れた例でしたが、Webのマーケティングの分析でも同じことは起こり得ます。
正しいデータの集計の仕方を知らないと、こんな弊害も起こります。別の事例を見てみましょう。
たとえば、インターネット広告の掲載を請け負っている代理店の担当者が、現在出稿しているバナー広告のテスト結果を知りたいという要望をクライアントから連絡を受けたという状況を想定してみましょう。
目的は、「バナー広告のテスト結果からどちらのバナーを掲載し続けるかを知るため」でした。
1週間の広告掲載結果を受け、代理店の担当者が確認したところ、犬の画像を使ったバナー広告Bのほうが猫のバナー広告Aよりも広告のクリック率が高いという結果になりました。
そのため、当然代理店担当者はクライアントに対して『犬の画像のほうが猫の画像よりもユーザー受けするバナーなので、今後も犬の画像を使い続けましょう!』という報告をしました。
さて、これは正しい報告でしたでしょか?
これもWebマーケティングの分析現場ではよくある判断事例です。
そこで、先ほどのバナーAとBの1週間の掲載結果を見てみることにしましょう。
そうするとクリック率が低いと考えられていたバナーAは、最後の7日目以外は常にバナーBよりも高かったことがわかります。
ただ、最終7日目の広告掲載量が多かったのと、7日目だけバナーBのクリック率が高かったので、1週間の集計で出すとバナーBのほうがクリック率が高かったという結果になってしまいました。
最初の集計結果だけを判断材料にすると、バナーBが良いという結論になりましたが、2つ目の集計結果を見るとバナーAが良い気がしますね。そこで、テストを続けてみました。
さて、もしあなたが代理店の立場であれば、この結果を受けてなんと報告をするでしょうか?
平均値だけで判断するとこのように、本来AもBもどちらも差がないものに対して、「これが良いバナーです」とか「あれは悪いバナーです」という判断を下してしまうことになります。
グラフやチャートを多用すると分析した気になる
先ほど掲示したチャートはわかりやすくするために例を極端にしてみましたが、これらはWebマーケティングの分析の現場において代理店やクライアントのマーケティング担当者がよく多用するチャートの一例です。
これらのチャートや集計データから、結論として結局何がわかったのでしょうか?
わかったことは、平均値で集計してもあまりバナーAとBの差は説明できなかったという点と、チャートでみてもいまいち今後どうすればよいのかわからないということがわかったという点の2点でした。
Webマーケティングの現場において、分析した(という思い込みの)結果、対策したのに、あまり効果が出ないとなってしまう事象の主原因は『正しい方法で集計しなかった』という、その一言に尽きるといっても良いでしょう。
解決策
今回は、Webマーケティングの分析に関するありがちなことについて書いてきました。
解決策を以下3つにまとめました。
- 分析をするときの考え方や方法、手順を知ること
- 集計の仕方を知ること
- 統計をはじめとする手段のバリエーションを増やすこと
記事面の都合上、今回はWebのマーケティングの分析の現場における問題提起だけになってしまいましたが、別の記事でこれらの3つのことについては解説していきます。
ただ、正しい分析は正しい問題の把握からであると考えており、そういって意味では、今回の記事で取り上げたような事象がWebマーケティングの分析の現場で実際に起こっています。
このことから、Webマーケティングの分析にかかわっている以上、こういったミスに陥っていないか気を配っておく必要があります。
最後に
冒頭にも申し上げましたが、大半の数字が可視化されるWebマーケティングの分析において、数字と正しく向き合うことがとても重要です。
しかし、Webマーケティングの分析にかかわっている一般職の人と仕事をしていると、こういう声も聞こえてくるのもまた事実です。
- 文系出身で数学は苦手だ
- そもそも分析の方法なんか専門的に学んでない
- 専門的に教えてくれるところがないし、誰も教えてくれない。
- 自分でやってみるけどうまくいかない。それが正しいのかわからない。
- 分析とか統計とかのブログは結構難しいわりに、すぐ応用できるような実践的な方法がかかれてない。
そういった方々へ、少しでもわかりやすく「Webマーケティングの分析」について、解説できればと思ってます。
(執筆:福田正義)
その他の記事はこちら
2「Webマーケティングの分析でよくある失敗とその原因」
4「分析とは何か?ー統計を学ぶ前に知っておかないといけない分析の話」