なぜ顧客はあなたのモノを買うのか?マーケティング戦略を成功させるステップ

2020年1月25日に、merc Education主催「上位1位のプロ営業マンが実践する3ステップー『誰でも売れる』営業メソッド」というイベントを行いました。今回のイベントレポートではmerc Education代表の福田正義が、なぜマーケティングを仕事にしようとしたのかまた、マーケティングの未来の可能性について話していたことをまとめました。

【経歴】福田正義(ふくだまさよし): 元Yahoo!コンサルマネージャー, マーベリック執行役員, merc Education代表。元作曲家。2005年オーバーチュア株式会社(買収により後ヤフー株式会社)入社。デジタルマーケティングのコンサルティング部門の立上げや教育に携わるうちに、マーケター教育の重要性に目覚める。2013年株式会社オモロワークスを創業、各社のマーケティングコンサルティングを行う。そして「マーケターのプラットフォーマーになる」という理念の基、2017年合同会社YuMK創業。2018年、株式会社オモロワークスの株式を全取得したマーベリック株式会社の執行役員に就任。2019年には、合同会社YuMKよりマーケティングスクール『merc Education』を開校し、マーケターの育成や機会の創出に励む。

マーケティングの原点となったYahoo! 

私がマーケティングに携わり、早15年の月日が経ちました。今はマーケティングの奥深さや魅力に引かれていますが、実は25歳までは作曲家として仕事をしておりました。当時結婚を考えていたのですが、作曲家やアレンジャーの仕事は不安定だと相手のご両親に反対されていまいました。

そこで、とにかく高収入な仕事に就職に就かなければと焦ったのですが、ビジネス経験ゼロだったので、Officeソフトが使えませんでした。ブラインドタッチもできない、やれることは一生懸命電話を取ることでした。今はこうしてマーケターとして立っていますが、そんなところから私のキャリアはスタートしました。

マーケティングの世界と出会うきっかけとなったのは、検索エンジンでおなじみの「Yahoo!JAPAN」に勤めたことでした。同社ではさまざまなコンサルタント(助言や指導をする専門家)の育成や、「WDN」という広告ツールを開発するプロジェクトマネージャーを務めていました。

そのほかにも、Yahoo!にはビッグデータが山ほどあるので、それらを解析し、人の購買行動について熟慮することもしてきました。Yahoo!は検索エンジンを運営している会社なので、実は社内だといろいろな検索情報が見れるんですよ。そういったものをマーケティングに活かしていくなど、いわゆる“考える”仕事をしてきました。

入社7年後「Yahoo!JAPAN」で培った経験や知見をもって独立。独立後はいくつかの上場企業やスタートアップなどの企業様に、マーケティングのコンサルティングをしてきました。また、コンサルタントの仕事をするだけでなく、「こんな面白い商品売っていますよ!」というセールスのお手伝いをするなど、コンサルタントの枠にハマることなく、幅広い視野を持って日々活動しています。

スポーツ選手のセカンドキャリアに活かすマーケティング 

弊社では去年、マーケティングの教育プログラムを立ち上げ、展開しています。その中で、現在Jリーグのスポンサーをやらせていただいております。「なぜ畑違いなことをやっているんだ?」と思われる方もいるかもしれませんが、実はサッカー選手に限らず、スポーツ選手のセカンドキャリアに非常に興味があるんです。

彼らはさまざまなものを犠牲にしながら一つのものを極め、成果を出してきた人たちです。しかし20代後半くらいで現役を引退する人が多い。その先の人生はまだまだ長く、次のキャリアを考えたとき、次はどうしようと悩んでいる方々はたくさんいます。

その状況を見たとき、マーケティングというスキルが活かせるのではないかと思いました。彼らは現役時代、「スポーツ」を通し、自分自身を商品として売り込んできた経験があります。自分を良く見せる方法や、何かをPRすることには慣れているはずなので、それを活かし、引退した後のセカンドキャリアのサポートや相談役などができないかと考えています。

彼が引退後どんなことをしたいのか、何ができるのか、そのためにどうすればいいのかということを手伝っていければいいなと思っています。これらの構想が今スポンサーをしている背景です。一見畑違いのようですが、私ができる手法でしっかりと彼らのスキルを活かそうと、日々試行錯誤しています。

モノの品質、適切な価格とは? 

モノを売るマーケティングで大事になってくるのは価格です。値付けをどうするか? という、学問の中でも非常におもしろい領域です。

例えば、コットン100%の普通のパーカーがあるとします。みなさんは、これをいくらだと判断するでしょうか。3,000円? 10,000円? その価値は人によってさまざまです。しかし実際は116,600円。多くの方が「高すぎる! 」と思ったのではないでしょうか。同じようなコットン100%のパーカーがUNIQLOで3,000円で販売されていたら、前者のパーカーに対しては、そんな高額なパーカーは誰も買わないと思うかもしれません。

しかしこのパーカーを提供しているブランドが「BALENCIAGA」だとしたらどうでしょう。感覚的に納得する方も多いのではないでしょうか。つまり価格の適切さは、わからないということなんです。

消費者がモノを購入するとき、この価格は本当に妥当なのか「参照価格」を考えます。参照価格とは「内的参照価格」という過去の購買経験から形成される消費者の記憶の中にある価格。そしてもう一つ「外的参照価格」という消費者の購買参照できる外的指標があります。値札やチラシ、「価格.com」などのような比較サイトはすべて外的参照価格にあたります。

このような参照価格を考え、提示されている金額に納得性を持たせています。同じような素材でも高額なBALENCIAGAの方が高品質だと勝手に思い込んでしまうんです。つまり、この値段差価格差が必ずしも品質と比例した差ではないよね、ということがわかります。

人がそのブランドを選ぶ理由。ブランド独自戦略

身近なものでいうとスマートフォン。国産のスマートフォンXperiaやGalaxyとiPhoneはどちらの方が性能が良いのかと聞かれても、正直そこまで差はないかと思います。しかしiPhoneを購入した方にどうしてiPhoneを購入したのかと聞くと、「なんかおしゃれだから」とか、「なんかデザインが良いから」など、説明が難しいモヤモヤした部分に惹かれている人が多いことがわかります。

それがどのような価値をそのブランドが消費者に提供しているかという、いわゆる「独自ブランドの戦略の価値」です。iPhoneだけでなくAppleの商品は、家電量販店で販売していても独自の空間を提供しており、その価値を高めたブランディングをしてるのがよくわかります。

同じような例では、家電で有名な東芝は非常に技術力に長けている会社です。今でこそ当たり前になっていますが、7日間ずっと録画し続けて、いつでも自分が見たい番組が見れるというハードディスク容量の多い商品を最初に作ったのは、東芝です。

その東芝が「レグザ」というテレビを発売しました。巷では品質が良いとは言われていたものの、売れ行きは不調。そこで東芝としては初めてタレントを起用して宣伝をすることに。そうすると急激に売れ行きが好調になったそうです。

このようなエピソードを聞くと、品質が良いとはどういうことか。品質と売上はイコールではないのか。そもそもマーケティングとは何か――と疑問が出てきますね。

‘実学’のマーケティングと学問としてのマーケティング 

最近ではデジタルマーケティングが成長し、Web広告が当たり前になってきています。マーケティングという立場からデジタルマーケティングの成長過程を眺めていると、テクノロジーは進化するけれど、それらを購入する人たちの行動や意思決定の在り方は、さほど大きく変わらないんだなと感じます。

マーケティングは「実学」と言われています。実際自分でやってみて、失敗を繰り返しながら学ぶ学問です。ですから、机上の上の勉強だけをやっていても上手くはいきません。人の行動性や人が意思決定する在り方などの本質的な部分は、きちんと理解する必要はあります。そのうえにテクノロジーを乗せると、テクノロジーも活きてきますし、有効なテクニックだと思います。

マーケティングのスキルと言われてもピンとこない方も多いかと思いますが、マーケティングには2つの学問があります。1つは心理学と合わせた人間を理解するという「学問領域」。もう1つはマーケティングのスキルを理解する「学習領域」です。

さらに「人の理解」は2つに分類できます。潜在的にモノを判断することと、実際に行動として可視化されること。潜在的なものは人間が本質的に持っているもので、無意識に何かやろうとしていることを指します。具体的な学問は「認知心理学」や「脳科学」、「行動経済学」が代表的です。

実際にモノを買ったり、買わなかったりなどの行動として顕在化もしています。

こういった学問を学んだうえで、Webの世界ならアクセス分析、マーケティングならリサーチして行動分析していくと、人がなぜこれを選ぶのか、何が好きなのか、無意識的にどんなことを考えているのかが見えてきます。

見えてきた仮説を元に、次は目的とする結果に辿りつくまでのシナリオを考えます。これらマーケティング戦略(※)や計画と呼びます。実際には広告や宣伝をしたり、SNSをしたりと方法は無限にあります。

※マーケティング戦略:マーケティング戦略には「環境分析」「戦略立案」「施策立案」の3つフェーズがあります。環境分析をした後に、これから戦う場所はどんな戦場かを調べ(戦略立案)、どこでどんな武器を使って戦うかを決めていきます(施策立案)。

マーケティングが教えてくれるもの 

マーケティングを学ぶと、多様性を持って物事を見ることができるようになります。自分の価値観や感情を入れず、人を俯瞰的に見ようとするので、非常に客観視できるようにもなります。常に第三者的な視点から見るので、普段の自分の視点以外の見方を手に入れることができるのです。

「20代の子のことが理解できない」と言う60代の方がいらっしゃいますが、それは理解できないのではなく、見ようとしていないだけなのかもしれません。マーケティングの世界では、10~60代の方に購入してもらいたい商品を扱うこともあるので、彼らは何を考えているのだろうと俯瞰的に見る必要があります。そうすると多面的に物事が見ることができ、非常に面白いんです。

この面白さと出会ったことが、私が15年間マーケティングに携わり続けている理由の1つでもあります。

最後に、私が非常に面白いと思っている本を紹介します。

ドイツ経済学者、価格の第一人者である、フィルマン・サイモンという先生の『価格戦略論』という本です。先生は本の中で「価格設定のプロセスは、製品のアイディアをコンセプトにするところから始まります。製品の販売準備が整った後ではなく、開発の早期に繰り返しの検討をしなければなりません」と言っています。

つまり商品が出来上がってから価格を考えるのではなく、商品を作る前から考えなさいというわけです。価格の大切さを改めて実感した本です。中古でしか買えないかと思いますが、ぜひ読んでみてください。

(話し手:福田正義、執筆:内野奈々、編集:筒井智子)